ハレの日の笑み子さん

誰もが美しくなると、
笑みが生まれる。
人生を素敵に駆け抜けてきた
女性たちへの新サービス。

ハレの日の笑み子さん
ハレの日の笑み子さん
  • 衣裳
  • ヘアメイク
  • 着付
  • 撮影料
  • 2L サイズ2カットアルバム
    価格 48,600 円(税込)~

ご利用の流れ

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お聞かせください

 撮影当日ご来店
衣装選び → ヘアメイク
 → 着付 → 撮影
(所要時間 約2時間半程度)

 アルバムお渡し
(撮影後約1ヶ月後)

ポートレート

「いつかね、
きれいに髪をセットして、
着物を着せてもらって、
写真を撮ってもらいたい。」

八十四歳の母がつぶやいた。
娘は「早くしなきゃ。」と、
何かに背中を押されるように
撮影の計画をはじめた。

母はいろんなことを
忘れてしまうようになった。頭の中で、いろんなピースが外れたり、またはまったりを繰り返す。

母が嬉しくなることをしたい。
それもまたすぐに忘れてしまうかもしれないけれど、とびきり嬉しくなる写真が撮れたら、
またそれを見たとき、きっと嬉しい気持ちになるから。

 数ヶ月ぶりに会った母の顔は日に焼けて真っ黒だった。今年の夏は酷い暑さだというのに、どうしても畑で野菜の世話をしないと気が済まないらしい。
母は子供のころから病弱だったというのに、屈強な身体だった父の方がずいぶんと早く逝ってしまった。

私が、真夜中まで着物のコーディネートや縫い物をしているとき、ふとこの二人のことを思う。真っ暗な畑を投光器で照らして畑仕事をしていた父。お遊戯会の前夜に、夜なべして姉の着られなくなったワンピースを5歳の私のスカートに作り直してくれた母。そんな二人の生きてきた姿が自分の中に或ると感じる。

「もう、無理して畑に出なくてもいいんだよ。」母の真っ黒でシミだらけの顔にファンデーションを塗っていく。

 うつむいて座っていた母が次第に顔をあげ、きょとんとした顔をしていたかと思うと、ヘアセットが終わる頃にはなんだか少しすましたような顔をして鏡の中の自分をを見つめている。

祖母がそうだったように母もまた、長年の畑仕事がたたってか腰が曲がっていて、身体をまっすぐに起こすことが難しい。姉に体を支えてもらいながら母の好きな青磁色の色留袖を着付けた。

はれやかな母の笑み。久しぶりに母のそんな表情に会えた。すました顔で写真を撮られている母は、この日のことを覚えていてくれるだろうか。記憶はまた消えてしまうかもしれない。でも、のちにこの写真を見たとき、また笑顔になってくれたらいい。

文:鳥島 悦子